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産婦人科で働く管理栄養士の主な仕事
病院で働く管理栄養士というと、食事制限のある腎臓病や糖尿病などの患者さんを受け持つイメージがあるかもしれません。実際、内科や泌尿器科に配属される管理栄養士は多く、食事療法にも携わっています。しかし、管理栄養士は病人や怪我人ばかりを対象としているわけではありません。病気や怪我以外で特別な配慮を必要とする人々に対しても、その能力を発揮します。産婦人科は少々特殊な現場ですが、管理栄養士が活躍する場の一つです。詳しい仕事内容を見ていきましょう。
入院中の妊産婦の献立作成
産婦人科には、出産を控えた妊婦の方や出産直後の方が入院しています。出産はとても体力を消耗するので、お母さんの健康を保ったり身体を回復させたりするためには、必要な栄養素が豊富に含まれた適切な食事を摂ることが必要です。また、母体の健康は赤ちゃんの健康にも直結します。管理栄養士は食の面からお母さんと赤ちゃんの健康を支えているのです。
さらに、最近では豪華な食事を提供する産院が個人病院を中心に増えてきています。必要な栄養素を摂れるのはもちろん、味だけでなく、見た目でも楽しめるような工夫がほどこされています。病院によっては、まるでホテルや旅館に泊まっているのではないかと錯覚するほど。出産後のお祝いとして出されるお祝い膳に至っては、フランス料理のフルコースやうな重などを提供しているところもあります。
そのため、出産する病院を選ぶ際は食事メニューを決め手とする方も多いそうです。このような病院では、食材の活用方法や調理方法に詳しい管理栄養士の存在がとても重要視されています。
また、中にはもともと持病を抱えている方や、妊娠期特有の疾患(妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群など)を発症している方もいます。そのような患者さんに対しては、症状や食欲などを考慮して献立を作成しなければなりません。このように、さまざまな人を対象に適切な食事を提供することが、産婦人科で働く管理栄養士の主な役割です。
妊婦さんの体重管理・栄養指導
妊娠中は赤ちゃんに栄養を与えるため、たくさん食べた方が良いとされていますが、食べ過ぎて体重が著しく増加してしまう人も少なくありません。一方で、つわりや味覚の変化によって少食になり、体重が予定通り増えない人もいます。体重管理は健康で丈夫な赤ちゃんを産むために重要なことです。そのため、来院時に食事リストの提出を促したり、生活習慣や食べ物の好き嫌いをヒアリングしたりして、食事の改善点やおすすめのレシピなどを提案しています。
その際、体重管理の必要性や栄養摂取量が胎児の発育に与える影響などを、科学的根拠に基づいてしっかり説明しなければならないので、管理栄養士には食に関することだけでなく女性の身体の仕組みについても深い知識が求められます。
母親学級・両親学級(父親学級)での講師
管理栄養士は、産婦人科や行政が開催する母親学級・両親学級(父親学級)での指導を行うこともあります。
内容は、妊娠から出産を通して変化していく身体のことや、それに合わせた食事の取り方などさまざまです。妊娠中に起こりやすい貧血や多胎妊娠などの予防・対処方法や、胎児の健全な発育のために必要な栄養素や控えるべき食材についても説明します。また、授乳期や乳幼児期における栄養摂取や調理方法などの指導を行うことも。
これらの知識は健康的な食生活を営むためには欠かせない知識であり、その後もずっと役立てられるものです。説明を受けた親御さんだけでなく、その子ども達が健康に成長し、望ましい食習慣を身につけるうえでも重要な役割を果たします。
婦人科系疾患のサポート
近年、月経困難症や不妊症、子宮筋腫などの女性特有の疾患は発症数が増加傾向にあります。特に若い女性の患者が急増しており、全体的に若年化が進んでいるそうです。そのため、妊婦さんだけでなくこのようなお悩みを抱える女性の多くが産婦人科を受診しています。
婦人科系疾患の患者さんに対して管理栄養士が何をできるのか、疑問に思う方もいるかもしれませんね。しかし、食事とこれらの病気は非常に強い繋がりがあるのです。婦人科系疾患が増えた原因は、朝食の欠食や食習慣の乱れ、欧米化した食生活だといわれています。したがって、正しい食事・栄養指導をすることにより治療をサポートして回復を早め、再発を予防することが可能なのです。
必要なスキルや活躍の場
ここまでで述べてきた通り、産婦人科で働く管理栄養士には高度な専門知識と高い能力が求められます。一人ひとりの状態に合わせて栄養バランスを考えた献立を作成するのはもちろん、見た目でも楽しめる盛り付けなどを考える力が必要です。女性特有の疾患や出産前後の身体のつくり、妊娠期や授乳期における食事などに対する知識も磨かなければなりません。
また、妊婦さんや患者さんと直に接する機会が多いので、コミュニケーション能力も重要になります。特に母親学級などで講師をする場合は、人に教える力も欠かせません。
このように多様なスキルを持つ産婦人科の管理栄養士は、医療現場以外でも幅広く活躍しています。産婦人科に勤めた経験を活かして、本を執筆したり各地で講演を行ったりする人もいれば、離乳食や妊婦向けサプリの開発などに携わる人もいるようです。
まとめ
近年は少子化が進んでいるとはいえ、産婦人科の需要は依然として高いです。したがって、今後も産婦人科で活躍する管理栄養士は増えると思われます。いずれは、退院後でも親子ともに健康的な食生活を送れるよう、産婦人科の管理栄養士主導で新たな取り組みが行われるようになるかもしれません。
食を通じて人々の健康を守り、毎日の生活を豊かにすることは、管理栄養士の使命とも言えるでしょう。これを実現するため、全国に約20万人いる管理栄養士たちは各々の分野でその能力を発揮しています。その活躍の場の一つがえいようJoinです。多くの企業から寄せられるさまざまな依頼を仲介し、管理栄養士の活動や社会貢献を手助けしています。
管理栄養士及びえいようJoinの今後の活動や取り組みにどうぞご期待ください。