8月も後半とはいえ、連日40度近い気温が続きまだまだ暑さは収まる気配を見せません。お盆休みも終わり、仕事や学校が再開した方も多いことでしょう。連休中、クーラーのある涼しい室内に慣れた身体には、通勤や通学中の酷暑が身に堪えます……。すると怖いのが熱中症です。しかも今年はマスクを着用する場面が多いので、なおさらリスクが高まります。そこで今回は、夏を無事に乗り越えるために食の面からできる熱中症対策をご紹介します。
目次
熱中症予防に効果のある食べ物
熱中症はいつでも、どこでも、誰にでも起こり得ます。そのため、日頃から対策を取っておくことが非常に大切です。ここでは、熱中症を未然に防ぐために効果的な食べ物をご紹介していきます。それぞれの食材が持つ栄養効果にも着目して分かりやすく解説しているので、ぜひ毎日の食事の参考にして、上手く食生活に取り入れてください。
梅干し
熱中症対策には水分補給だけでなく塩分補給も大事だといわれていますね。この季節は塩飴や塩分を含むタブレットがスーパーやコンビニなどで売り出されていますが、特におすすめなのは梅干し。なぜなら塩分のみならずクエン酸が豊富に含まれているからです。
クエン酸にはエネルギーを効率的に作り出したり、乳酸などの疲労物質を減少させたりする働きがあります。そのうえ、ミネラルの吸収促進や、酸味で唾液や胃液の分泌を促すことによる食欲増進効果もあるのです。まさに熱中症対策にはうってつけの食べ物といえます。
ちなみに熱中症は外にいる時やスポーツをしている時以外でも起こります。熱中症で病院に搬送される人の約4割は自宅で発症しているのです。涼しい室内にいるから大丈夫というわけではないので、普段から熱中症対策をすることが大切です。その一環として毎日の食事に梅干しを取り入れてはいかがでしょうか。
参考:総務省消防庁「令和元年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」
枝豆
枝豆は畑のお肉といわれる大豆の未熟豆なだけあって、さまざまな栄養素を豊富に含んでいます。その中でも特に多いのがカリウムです。汗をかくと体内の水分だけでなく、カリウムなどのミネラルも一緒に流れて出てしまいます。よくある夏バテの症状として、身体がだるい、食欲がないなどが挙げられますが、それはカリウム不足が原因かもしれません。
水分や塩分を補給することの大切さは広く知られていますが、カリウムを補給することの大切さはあまり知られていないのが現状です。カリウムが不足してしまうと体内の細胞が脱水症状を起こしたり、内臓機能が低下したり、痙攣やこむら返りが起こりやすくなったりします。夏は水分、塩分に加えてカリウムも意識的に摂るようにしましょう。
また、汗と一緒に流れ出てしまう成分はカリウムだけではありません。鉄も失ってしまうのです。鉄が不足すると貧血になってしまい、頭痛やめまい、動悸が起きたり、疲れやすくなったりするので注意が必要です。熱中症の初期症状とも似ていますね。枝豆100gあたりには2.5mgの鉄が含まれており、これは成人男性の一日の摂取量の約1/3、成人女性では約1/4にあたります。
参考:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
蕎麦
暑さは身体のさまざまな機能を鈍らせます。それにより、腸内のバリア機能も弱ってしまうのです。すると腸内環境が悪化して熱中症になりやすくなってしまいます。したがって、食物繊維を多めに摂って腸内環境を整えることが熱中症対策になるのです。蕎麦には、糖質やコレステロールの吸収を抑制する水溶性食物繊維と、腸を刺激してぜん動運動を促す不溶性食物繊維がバランスよく含まれています。
また、夏は暑さを逃がそうと血管が拡張するので、血圧低下による不調が起こりやすいです。実際、熱中症の初期症状である立ち眩みやめまいは、血圧の低下によって引き起こされます。この血圧の変化を予防するのが蕎麦に含まれるポリフェノールの一種、ルチンです。
ルチンには毛細血管の弾力性を維持する働きと血管収縮作用があるので、血圧や血流を良好に保つことができます。夏場は冷たくて喉ごしの良い麺類を食べたくなりますが、そうめんや中華麺よりは蕎麦を食べるようにすると良いですね。
キウイフルーツ
キウイは疲労の軽減に効果的なビタミンCを豊富に含んでいます。身体を錆びつかせる活性酸素を抑制したり、免疫力を高めたりする働きがあるので、暑さで疲れやすい夏にはぴったりです。しかも8割以上が水分の瑞々しいフルーツなので、水分補給にも適しています。
人間は自分の体内でビタミンCを作ることができないため、食べ物から積極的に摂らなければいけません。果肉が黄色のキウイには特に多く含まれており、その含有量はレモンよりも多いのです!一つ食べるだけで一日の摂取量を十分に満たすことができます。緑色の果肉の場合も、一個半食べれば一日の摂取量を摂れます。
また、ビタミンCはコラーゲンの生成を助け、肌の調子を整えることから、化粧水や美容液にも使われている栄養素です。そのため、夏に気になる紫外線のダメージにも効果があり、シミやそばかすの予防に役立ちます。
そしてキウイに含まれる特有の成分、アクチニジン。これには、たんぱく質の分解を促す働きがあります。つまり、キウイと一緒に食べると肉や魚などのたんぱく質が分解されやすくなるのです。そのため、消化を助けて小腸での吸収率を上げる効果が期待されています。夏場は暑さによる疲労や、冷たい飲食物の摂りすぎによって消化不良になりやすいです。
暑さで体力を奪われがちな夏は、特に食事からの栄養摂取が大切になります。食べた分の栄養をしっかり身体に吸収できるようにしたいですね。
参考:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
水分補給に適さない飲み物とは
熱中症対策の基本は水分補給ですが、ただ水分を摂取すれば良いというわけではありません。たとえば、成人男性が比較的安静にしていた場合は一日に1,300mlの水分を飲み物から摂取する必要がありますが、一度のたくさん飲むと体液のバランスが崩れ低ナトリウム血症(頭痛、意識混濁など)になってしまうので、一度に飲む量は150~200mlをめやすにして、こまめに水分補給することが大切です。
また、水分なら何でも良いというわけでもありません。そこで、ここからは水分補給に向いていない飲み物を3つご紹介します。
ビール
ご存じの通り、アルコールには利尿作用があります。中でもビールは利尿作用が特に強いお酒です。しかも、アルコールを分解する時にも水分を消費するので、1L飲むごとに1.1Lの水分を失うといいます。つまり、お酒だけでは水分補給になるどころか、かえって脱水状態になってしまうのです。夏はビールが飲みたくなる季節ですが、必ず水も挟んで飲むようにしましょう。
緑茶(玉露)
これも多くの方がご存じかと思いますが、カフェインを含む飲み物には利尿作用があります。コーヒーやお茶など、さまざまな飲み物に含まれるカフェインですが、群を抜いてカフェイン量が多いのが緑茶の一種、玉露です。なんとコーヒーの2.5倍以上ものカフェインが含まれています。
近年の研究では、水分補給においてカフェインの利尿作用を気にすることはないとされていますが、それはカフェインの摂取量が400mgまでの話。玉露には100gあたりに160mgも含まれているのです!250ml(コップ一杯強)飲んだらこの数値を超えてしまいます。そのため、お茶で水分補給する際には玉露以外を選びましょう。
参考:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
参考:国立健康・栄養研究所「カフェイン」
コーラ
甘いジュースには糖分がたっぷり含まれています。この手の話でよく引き合いに出されるのはコーラですね。ペットボトル1本あたりに56.5gもの糖分が含まれており、角砂糖(1個3g)に換算すると実に18個以上になります!これはコーラに限らず、甘いジュース全般に当てはまります。
水分補給として甘いジュースを飲むと、血糖値が急激に上昇して身体に負担をかけてしまう恐れがあり、夏バテの原因になりかねません。糖尿病や肥満にもつながるので、嗜好品としてたまに飲む程度にしましょう。
まとめ
今回は熱中症対策に効果的な食べ物と、水分補給には適さない飲み物をご紹介しました。日々の食事の内容やよく飲む飲み物を、改めて見つめ直すきっかけになったなら嬉しいです。えいようJoinでは、皆さんの健康的な生活を応援すべく、このコラムや他企業様とのお仕事などを通じて、食事や栄養に関するお役立ち情報を発信しています。その他にも、えいようJoinの登録管理栄養士による食事・栄養指導も行っているので、食に関するお悩みやご相談があればお気軽にお問い合わせください。