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医療 管理栄養士

在宅医療を支える「在宅訪問管理栄養士」が現代社会で必要な理由とは

言わずと知れた超高齢化社会である日本では、健康寿命の延伸や高齢者福祉の見直しなどが図られ、社会の在り方がどんどん変容しています。そのような背景もあり、近年では自宅で医療や介護のサービスが受けられることが増えてきました。それにしたがい、直接自宅に訪問して栄養指導や食事指導を行う在宅訪問管理栄養士のニーズが高まっています。今回はそんな在宅訪問管理栄養士がどんな職業なのかを詳しく解説していきます。

在宅訪問管理栄養士とは

在宅訪問管理栄養士とは2011年に登場した、比較的新しい職業です。高齢化の進行や世論の変化にともなって、この頃は在宅医療が推進されるようになりました。しかし、そうなると心配なのが在宅ケア。そのうちの一つが食事です。

病院であればその日の体調や治療内容に合わせて、栄養計算がしっかりされた病院食が出てきますが、自宅だとそうはいきません。そこで注目されたのが管理栄養士です。医療情報を把握し、自宅療養者やその家族、医師やケアマネージャーとの連携が取れる管理栄養士がいれば、自宅でも適切な食生活を送れます。

今はまだ在宅訪問管理栄養士の数も少なく、認知も広まっていませんが、今後は在宅医療とそれをサポートする在宅訪問管理栄養士の存在は、ますます重要になっていくでしょう。

在宅訪問管理栄養士になるには管理栄養士の資格とは別に、日本栄養士会と日本在宅栄養管理学会から認定資格を得なければいけません。また、認定試験を受けるにも厳しい受験資格が必要で、管理栄養士登録から5年以上、病院・診療所・高齢者施設等での実務経験が3年半以上であることが前提です。

さらに所定の講義を受講し、レポート審査を通過した人だけが受験できます。試験を受けて合格すれば在宅訪問管理栄養士の資格は得られるものの、5年ごとに更新手続きが必要です。更新するためには学会などに参加・発表して単位を取得することが求められます。

在宅訪問管理栄養士とは命を預かるに等しい重大な責任を負う職業です。これだけ厳しい条件をクリアした職業であれば、医師や介護福祉士からの信頼も厚いので、患者さんやご家族の方も安心して任せられますね。

参考:一般社団法人日本在宅栄養管理学会ホームページ「認定制度について」

在宅訪問管理栄養士ができること

在宅訪問管理栄養士は、月に1~2回のペースで在宅療養者の自宅を訪問し、食生活の確認や栄養指導を約30~60分かけて実施します。そのために身体測定や疾患・症状の把握、治療状況の確認なども行っています。栄養指導に関しては食欲の有無や好みの味付け、嚥下機能(食物を飲み込む力)に合わせて行う必要があります。

また、在宅療養者やその家族の能力や状況によっては料理をすることが難しい場合もあるでしょう。そのようなケースでは、冷凍食品やレトルト食品、缶詰などの活用方法や、スーパーやコンビニで弁当やお総菜を選ぶ時のポイントなどを指導します。一人ひとりの状態にその都度合わせた食事・栄養指導を行うのが在宅訪問管理栄養士です。

福祉・医療現場で活躍する在宅訪問管理栄養士

在宅訪問管理栄養士は、基本的に介護保険事業所や保健医療機関に所属しています。医師からの指示に基づいた仕事でなければ、保険診療の加算対象とならないため報酬が支払われないからです。そのため多くの在宅訪問管理栄養士は、病院やクリニックなどの医療機関や老人ホームなどの介護施設で働いていることがほとんどです。フリーランスとして普段は多方面に活動している管理栄養士も、在宅療養者を訪問して食事・栄養指導をするために、指定の事業所と契約を結んでいます。

また、日本栄養士会が立ち上げた栄養ケア・ステーションも在宅訪問管理栄養士が活動する場の一つです。栄養ケア・ステーションとは、食事や栄養面の相談ができる場所であり、多くは薬局などに併設しています。まだ数は少ないですが独立型の栄養ケア・ステーションも出てきました。独立型は自由度が高いので、出張型料理教室などを開催する場合もあります。

その他にも薬局で働く在宅訪問管理栄養士がいるなど、だんだんと在宅訪問管理栄養士の活躍する場や働き方が広がってきています。

今後ますます需要が高まる在宅訪問管理栄養士

日本の高齢化はこの先も進行していくことが予想されています。それはつまり、医療や介護が必要な人口が増えるということです。また、在宅医療を望む声も多く、2018年に厚生労働省が行った「最期を迎えたい場所」のアンケートでは約7割が「自宅」と回答しています。

しかし、自宅で暮らす高齢者は病院や介護施設で生活する高齢者よりも低栄養状態になりやすいです。食事面から生活の質を上げ、少しでも長く生きられるようにサポートをする在宅訪問管理栄養士は、在宅医療が普及していく今後の日本になくてはならない存在と言えます。

さらに、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるように「地域包括ケアシステム」の構築が厚生労働省によって進められています。地域包括ケアシステムとは、2025年までに住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供され、高齢者の自立した生活と尊厳を守る仕組みのことです。

国が主体となって取り組んでいるこのシステムが実現すれば、自宅にいながらも適切な食事・栄養指導が受けられるサービスの需要は一層高まります。在宅訪問管理栄養士への注目度はさらに増すでしょう。

参考:厚生労働省 厚生労働統計一覧 「人生の最終段階における医療に関する意識調査」
参考:厚生労働省 「地域包括ケアシステム」

まとめ

AIの発達と普及にともなって10年後、20年後には多くの仕事が人工知能やロボットに代替され、さまざまな職業がなくなるといわれています。しかし、この在宅療養者を訪問しての食事・栄養指導に関しては人間によってしか行えません。なくなる職業が多いといわれる中でもニーズが右肩上がりに上昇していくであろう、将来性の高い職業です。そして在宅訪問管理栄養士は、医療ケアに携わるだけの豊富な知識と高い能力を有しています。

もしご家族が在宅医療を受けているのであれば、在宅訪問管理栄養士のサポートも受けてみてはいかがでしょうか。また、医療従事者や介護福祉士の方は、ぜひ積極的に在宅訪問管理栄養士を起用していただけたらと思います。

えいようJoinでは在宅療養者に対する訪問指導は行っていないものの、登録管理栄養士が健康な生活のために随時栄養指導を実施しています。「日々の食事や栄養状態に不安があって誰かに相談したい」という方や企業等でのセミナーをご検討されている方は、お気軽にお問い合わせください。

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